耐震構造については一時話題になりましたがいまでも厳しいんでしょうか?
厳しいですよ。構造計算自体やっているんですが、平成20年12月現在、2階建ての家で構造計算書を検査機関に全件が提出する必要はありませんでした。しかし今年から構造計算書の提出が義務付けられるかもしれません。それが実現すればその費用がかかってくるでしょうね。
耐震に関して技術的な進歩などありますか?
目に見えないところではありますよ。例えばプレカットと言って仕口という木と木の継ぎ目を削る技術の精度が職人の数が減った分、機械の精度が上がってきています。
昔はプレカットだと「職人の手がかからないので工期も短くなるから、プレカットを使わせてください」と言った感じだったのが、機械の精度が格段によくなったことで職人の技量に依存しない安定した品質が確保され、今ではプレカットじゃないと安心できないと言われるまでになってきています。
スーパーメタル工法とはまた別なんでしょうか?
スーパーメタル工法は仕口の部分を金物でやっているんです。手間としてはプレカットより少ないという面もあるんですが、まだ少し高いんです。スーパーメタルにしてもそうですし、ビックフレームやロケットピンなど金物工法があるんですが、基本的にはみんな一緒です。
工法についてはどうやって決めているんでしょうか?
大まかに分ければコンクリート・鉄・木となりますよね?そしてコンクリート・鉄・木の順番でコストが高くなるんです。そうすると予算の関係で木での工法を選択することが多いです。かといって木造の工法が悪いわけではないんです。むしろ住み心地はいい。ですから木造工法が選択されることが多いんでしょう。
コンクリートの家って存在するんでしょうか?
ありますよ。有名なところでは安藤忠雄さんの住吉の長屋で、コンクリートの素材を活かした打ちっぱなしなんですね。この建築物で安藤さんが賞を獲って以来、みなさんコンリートの素材を活かした家というものを建築するようになって、コンクリートの家はいわゆる高級なイメージがあるようです。まあ、値段が高いので高級といえば高級なんでしょうけど。
コンクリートの家は機能的にはどうなんでしょう?
そうですね・・・。まあ冷たいでしょうね。あと、コンクリートが本当に乾燥し切るまで10年近くかかったりします。だから地下室などに行くと湿った感じがしますよね?外側が土なので内側からしか乾燥せず、完全に乾燥するのになおさら時間がかかっているんでしょう。近頃はコンクリートの乾燥を促すような薬を混ぜることで、コンクリートを早く乾かすこともできるようにはなってきているんですが、それでもすぐには乾燥しないですよね。鉄筋などは中に鉄が通っていて外が石なので、医学的根拠があるわけではありませんし、直接何が起因しているのかはわかりませんが底冷えを感じることが多いです。 断熱材を入れることで幾分底冷えがマシになったりはするんですがあんまり冷えたら体によくないですよね。
メリットはないんでしょうか?例えば暑い時期には涼しいとか?
そんなことないですね。(笑)石と鉄なんで熱伝導率が高いので外側が温まれば中も暑くなりますね。
鉄筋コンクリートというのは建物を形造る時にさまざまなメリットがあります。そういった面で設計者もコンクリートを使いたがるのかもしれませんね。
またコンクリート材を使用すれば木造では耐久性に問題が出るような大きな建造物も造れますし、石は圧力に強く、鉄は伸縮する特性を持つのである種の耐震性が生まれます。
だからと言って一般住宅に関して言えば木が耐震性の上で鉄筋コンクリートに劣るというわけではありません。木はそれ自体伸び縮みするんで揺れている間も力が抜けると考えられていて耐震方法が異なるだけで建築基準法はどの建材でも条件を満たしているのでご安心ください。
それでは木というのは熱伝導率が低いんでしょうか?
最高の断熱材は空気なんですよね。顕微鏡などで見ると木の細胞の中にはその空気の導管がらせん状に走っているんです。その空気があのレベルで練り込まれている素材というのは木しかないと言えると思います。
コンクリートも完全に乾き切れば、今まで水分があった部分にに気泡のような隙間が生まれます。そうすれば湿気も吸うし、断熱効果も生まれるでしょうから住み心地は増すでしょうね。
ですから、新築してから10年後くらいに入居していただければいいですね。というのはアドバイスさせてもらっています。(笑)